ふつうの婚 3 〜Mr&Mrs AKABANE〜






朝。

仕事(裏の)から帰って、家の扉を開けようとする赤屍。

「……」

 ドアノブにかけられた手が何故かためらうように一度降ろさた後、ガチャリと扉を開ける。

 すると。

「…お帰りなさい!」

 グラスを持った妻が出迎えた。

「…起きていらしたので?」

「あら。旦那様が徹夜で仕事してきたんだから、早起きくらいするのは当然じゃないの。はい水」

 ニッコリ。

「ありがとうございます」

 ニッコリ。グラスを受け取る。

「朝食の準備は出来てるわ」

「っ……それはそれは」

 呻き声をかみ殺す。(必死系)

 表情筋を激しく叱咤して人工スマイルを張り付かせながらチラリとキッチンを見ると、蟲滅香が置かれていた。赤屍は素早くグラスごと熱帯魚の水槽に放り込む(ひどい)

 そして食卓につくとそこには――。

 窓を閉めるのは黒カーテン。暗い部屋を灯すのは無数のキャンドル。キラリと輝く銀の食器。五芳星がプリントされたタペストリー(黒地に赤)壁にはペタペタとカバラ文字。ブクブクと謎の液体。丸い水晶。ワラ人形。五寸釘、装飾剣…そして中央の謎の肉塊はおそらく昨日の残り。

 今日の赤屍家の朝の食卓は、爽やかさ0。陰鬱さ100%である。

 「……卑弥呼さん、これは?」

 「今日は新しい占いのデモンストレーションをやるつもりなのv」

 いや、これ占いじゃないでしょう。呪術でしょう。

 「…その占いって、何を占うものなのですか?」

 「それは秘密」

 「…そうですか」

 「あっ、サラダ忘れてた。座って待ってて」

 パタパタとスリッパを鳴らして、新妻がキッチンに消えた。

 「……」

 無表情に赤屍はぷすりと指をフォークで刺す。流れてきた血をフォーク、ナイフ、一応スプーンに垂らす。無心に自分の血と混ぜていく赤屍医師はやや眼が血走っている(かなり必死系)

 「赤屍ー。ドレッシング。フレンチと和風とゴママヨ、どれがいいー?」

 ひょいとキッチンから顔を出す卑弥呼。さっと血を隠す赤屍。

 「和風で」

 「OKー!」

 卑弥呼は出来上がったサラダをテーブルに置き、包丁を取り出す。

 「あんた肉どれくらい食べる?」

 包丁をくるくると弄ぶ卑弥呼から、すかさず包丁を奪い去る。

 「私が切りますよ」

 スパスパと鮮やかに肉を解体しながら、赤屍は悶々と考える

 昨日の夕食でにダメージを食らっている胃袋は、果たしてこの朝食に耐えられるだろうか。一撃必殺でこそなかったが、二撃必殺である可能性は極めて高い。ああなんだか、この肉昨日の熊のカマトトの部分ですねとか。まな板代わりにひている紙に書いてる文字は、きっと「呪」か「殺」ですよね、とかどうでも良くなってきた。

 卑弥呼は、いつもより美白に磨きがかかって白い赤屍を、眼を細めて見つめる。

 彼女はミステリアスな微笑みを浮かべながら、「ねぇ赤屍?」と話しかける。

 「さっきは言えなかったけど、今ならこれが何の占いか教えてあげる」

 ことり、とグラスを置く。




 「これは、アンタが12時間以内に人を殺しているかいないかを占うためのものよ。赤屍!」




 はっ!とした瞬間。切っていた熊が眼を見開き襲い掛かってきた。

 瞬時にメスと新たに武器になったナイフを出現させて、ちっと舌打ちする。こんなことなら愚痴愚痴と文句をたれた依頼人など切るんじゃなかった。熊を切り刻み終えると、今度は正面から炎が襲い掛かってきた。




 「やっぱりあの悪趣味馬鹿コートはあんただったのねぇーーー!!」

 「やはり、あの鼻につく香水は貴女の!」

 「信じられない!!あんたがよりによって奪い屋の天敵の運び屋だったなんて!しかもあんた業界評判最悪の嫌われ者じゃない!この結婚詐欺師!!!こんなことならもっと料理に腐った薬草入れとけば良かった!!」

 「何ですって!いつも人間が作りえる料理のフロンティアだと思っていたら、そんなもの入れてたんですか!?」

 「有効活用よ」

 「貴女はエコ精神で私を悶死させるおつもりですか!!」

 赤屍がキャラを忘れて叫んでる。よっぽど耐えかねていたらしい。

 「なによ、あんたのカーテンの趣味!いい年した男が、キキーとララー!?はあぁぁー!?てめぇはどっかの王子様かってぇの!!」

 「貴女は女性として枯れすぎているんです。そもそもあんな料理を人に出せるという神経が…」

 「なんで話が料理に戻って来てんのよ!!そんなに不満だったわけぇー!?わかったわよ、だったら」



 離婚よぉぉぉぉぉぉおおーーーーー!!! 



 新妻は夫に、離婚宣言と爆炎香を叩き付けたのだった。




 続く

     











やっと書きたかったテンションに。これからは楽(なハズ)